パイプライン
某社にいる友人(望まない異動によりゼロから仕事覚え中)の転職について情報収集など。
某一流企業女史(有能)に転職の打診をお願いする為、諸々条件などを調査するわたしであった。
他人のことなんかどうでもいいんだよ! 自分の行き先考えろよ!
と、脳内でもう一人のわたしが怒鳴りつけるのを無視しながら、女史と更にメールでやりとり。
「○○さんて若いんじゃないんですか?」
「え? 違う違う、あなたとひとつ違いとかですよ」
「ええええ!? そうなんですか! あ、そうか…院とか行ってるからか…若いと思い込んでました」
「見た目も結構若いもんね」
「こないだ○○さんのチームと仕事をした時、うちの社の部会で開口一番『イケメンだったか?』って部長が…」
「何の心配なのそれ」
「どうやら部長達はわたしの嫁き先を真剣に心配しているらしいです」
「……それは心配だ」
「○○さんも、あれで背がもう少し高ければめちゃくちゃモテそうですよね」
「わたしは身長とか全然気にしないから大丈夫」
「何が大丈夫なんですか」
「だって高校の時に心のアイドルだった男の子は、わたしより背ぇ低かったもん」
「聞いてないし意味が分かりません」
「ヒデエ!」
「でも○○さん、その年なんですか。大変、早く動かなきゃ」
「なして?」
「だって若ければまだまだって思いますけど、そのくらいになったら流石に」
「まあねーそろそろっていう年齢だよね世間的には」
「だから早い所、上司に相談してみます!」
「あー宜しくお願いします。本人にも言っておくわ」
当日24時前になって、○○さん(異動被害者)に電話をする。
社内は危なくて相談出来る相手がいない為か、ここぞとばかりに胸の裡を吐露する友人男子。
「だからさー俺なんか仕事遅いし、この部署でやり甲斐をって言ったって、無理っていうか。悪いけどワードもExcelもわかんないのよ? どうしろっつーの」
「そうなんだ……あれ? 論文とか何で書いてたの?」
「俺が使ってたのLinuxだもん」
「……大丈夫、わたし未だに一太郎だから」
「うわあ一太郎!?」
「ジャストシステム万歳。日本語変換は最高水準です夜露死苦!」
「一太郎、俺も大昔使ってたけど、花子にまで手ェ出そうとして、もしやヤバイのではと思ってやめたんだよ。流石に一太郎はどうかと思うけどね」
「Linuxの人に言われても説得力ないんだけど。わたしも下手するとLotusだもんな…行かなかったけど」
「そうだよなあ。一太郎から入ったらLotusだよなー」
「でも行かなかったよ。だからってExcelが分かる訳じゃないですけど。ほぼ使わないし」
「あ、今日さ、Excelで資料作成してたのよ。そんで、shiftキー押しながらクリックしたら、裏側が出てきてね? うお! なんだコレ! スゲースゲー! って」
「スゴイネ! 大発見ダネ!」
「凄いでしょ? それがんもう便利で便利で仕事が捗ってしょーがないんだよ」
「良かったねー仕事に殺られる寸前だもんね!」
「…………」
「…………」
「……っていうような発見は毎日あるけど、それがある意味やり甲斐と言えなくもないのかも知れない」
「こじつけなくても分かってるから大丈夫だよ……」
話は流れて、現在わたしが担当している、諸々の仕事について。
彼の同期が関わっているので、それを報告しました。
「あーそうなんだ、○○君か…」
「うん。元気そうだけど」
「ふーん…まあ、その仕事ってお利口さんな奴しか行かないからな。俺が出たらピーばっかで、資料として読めないしね」
「だろうね。殆ど真っ黒で伏せ字率85%くらいになりそうだよね」
「『○○です』とか『あの×××みたいに△△△△て、○○たんです』っていうトコしか載らない」
「助詞と送り仮名だけか」
「そうそう。その方が面白いじゃん。カタいことばっか書いても、誰も読まないし、信用出来ない」
「それはそうだけど、伏せ字率が高すぎて、そもそも資料として日本語が読み取れないような?」
「……そうだね」
「……そうだよね」
「ともかく、女史さんに携帯の連絡先を伝えておいて。会社のメールは危険過ぎて禁止」
「うぇえログ取られてるのか…何処の情報部だよ」
「そーなの内部の警備すら軍隊並みなの。携帯メールはトイレ行く時とかにこっそり見られるけど、昼休みも携帯禁止だし、基本的に早朝か夜中じゃないと無理。電話もまず出られません。会社出られるのが23時とかな上に、最近は午前1時まで意識が保たないんだよね」
「その生活ならそうだろうな……早く転職出来るよう祈ってるよ……」
さあ、彼はどの会社へ移るのでしょーか。